No.44

Top / No.44

No.44 「食品の裏側」

2009.9.4

「食品の裏側」安部司著 東洋経済新報社を読んで


 本稿更新は半年振りです。この半年間の私の興味の中心は「食」でした。きっかけはインターネット有料放送のVideonews.comを見たことです。同放送はジャーナリストの神保哲生と社会学者宮台真司のトーク番組です。春先に過去のアーカイブを見ていて安部司氏がゲストとして出ている回がありました。同氏は頭書書物を4年前出版し60万部を売り上げ食品添加物の実態を世に知らしめた人であります。著者は食品添加物商社の元トップセールスマンであり、食品添加物の神様とも言われた実務畑出身の方です。

 頭書書物、ビデオニュースの内容を紹介すると共に私自身が感じたことを以下書いてみます。

 食品添加物は人工、天然のものを含めて1500種類くらいが法的に使用を認められているそうです。現在のインスタント食品、コンビニ弁当をはじめ店で売られている加工食品には30種以上の食品添加物が含まれているようです。まさに「魔法の粉」の組み合わせでスープから飲料まですべて作れるようです。しかも現代人が好む味付けで。特に今の子供たちは内食が少なく外食、コンビニ利用の頻度が高いものは食品添加物の味に慣らされ、それがないと満足できないような感じもあります。

 食品添加物は毒性があり、すべて否定しているわけではありません。それが世に普及はびこっているにはそれだけの理由があります。安さ、便利さ、外形の美しさを要求する消費者の要望を満たすにはメーカーは心身への影響評価が完全とは言えない状況でも法的に何ら問題のない添加物を使用することにはコスト重視の経営体からみれば当然の行為だと思います。

 ただ、何か私はひっかかるものがあるのです。明白ではない抵抗感があるのです。開発された添加物が心身にマイナスの影響があるのかないのか、認可された添加物が使用された時間はまだまだ大した時間ではありません。その中で評価を下すのは早計だと思います。子、孫の世代への影響など誰にもわかりません。そういう意味では医薬品の開発の効果と副作用と同じ世界があるものと思っています。

 一度スーパーに行かれたら弁当、お菓子、インスタント食品等何でもいいので裏返し原材料表示シールをご覧になってください。化学の授業じゃあるまいし、何行にもわたってどうしてこれだけの添加物がいれられなければならないのかわかりません。例えばハムを例に出せば無添加ハムの原材料表示は豚肉を始め4項目のみです。一般的な大手のハムは一括表示抜きで考えれば30項目以上の添加物が含まれています。最も怖いのは子供たちの味覚の変化です。生まれてこのかた今のような食生活を普通にしてきた親に育てられた子供たちは食品添加物をおいしく感じる味覚に変化していると書物には書かれています。著者の安部氏が言うには添加物のプロからすれば現代人がおいしく感じる加工食品を作ることは容易いことのようです。

 今日の食品添加物に依存した食品を日々食すことにより失ったものは何でしょうか。自然の素材が生み出す奥深いそのもののおいしさは食品添加物に慣れ親しんだ舌にはわからないでしょう。現代人が感じるおいしさの源泉は化学調味料、甘さ、油分だそうです。これがないとおいしく感じないそうで、特に甘さ、濃厚さは進度を深めるそうです。反対に自然のままの素材は淡白すぎて敬遠されるようです。失ったもう一つは食事を作る時間と食事をする時間。行為する時間の欠如から生じる家族を中心にした人間関係の希薄化だと思います。

 最終的には一人一人の選択の自由です。食品添加物は当然いいことも多く世間に認知、普及されています。大げさに考えればその選択は食の重要性からみればちょっとした生き方の選択にも繋がるかもしれません。

 この半年食品添加物について調べたり書物を読んだりしてきましたが、4月21日ショッピングモール楽天市場に「無添加スイーツの店」をオープンさせました。食品添加物を使わないスイーツ作り。ハッキリ言って大変です。さらに、小売業でありながら当初から無添加に興味ある客層だけをターゲットにした店つくりは、自ら需要層を限定少数派に絞っているわけで大変です。

つづく