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No.26 私塾の様な企業を創りたい

2007.2.23

 最近、経済、経営関係の本を読んでも、テレビをみても何故かピンとくるものがありません。時価総額経営、株価至上主義、投資ファンド、TOB、MBOといった言葉が溢れ、それらの意味は知識として知っておく必要はあるでしょうが、今は投資家を呼び込む新規ベンチャー企業の小賢しい世界を想像してしまいます。特に企画書を作り、プロジェクターから投影されるスクリーンを背景にMBA用語を抑揚なく流暢に話すプレゼンターに対しては何か違和感がします。

 嚆矢の事業はシンプルで且つ利他的なものと考えています。そうでないと長続きしません。いくら儲かる仕組みといってもその事業の継続性を維持するには、仕組みに柔軟性を持たせないといけないし、事業内容が人間のシンプルな生き方、価値観に合致したものでないといずれ事業そのものが消滅する運命にあると考えられます。将来計画を担保に投資をゲーム的に行っていける現代の資金市場の有り方は本物の目利きが少ない中どうなっていくのか興味があるところです。

 企業の成長、衰退の過程で経験し、培ってきた思考は大変大事であり、桜の開花時期の前に生ずる休眠打破の自然現象は企業にも人にも当てはまる事だと思います

 具体的にはどうすれば有志の企業が出来るのでしょうか。企業単位で考えれば企業理念、企業文化の創造、醸成かも知れません。特に企業理念は会社運営に当たって最大限重視する価値観の鏡ともいえるものです。これがない状態での意思決定はいずれ壁にぶち当たり、存在の価値を見失い空虚感に襲われるだけだと思います。

 明治維新政府を作り上げ、近代日本の国体の基本を完成させた一翼を担った長州志士の精神的支柱となった吉田松陰・松下村塾、医業の根本思想を作り上げた緒方洪庵・適々塾。多彩な人材を輩出したこれらの私塾は、分野に拘らず若い人々の学問への渇望に応えた場だったのでしょう。私にとって企業が当時の私塾の性格を持ち、多種多彩な人が一企業の枠を超えて発想できる場を提供できるようになることが今願っている一つの形です。