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No.20 体制製造家と処理家

2006.8.16
司馬遼太郎「手掘り日本史」より
文 大山治

 盆休み。
 司馬遼太郎の本を読んでいます。
 江藤文夫氏の聞き取りによる「手掘り日本史」が面白い。

 江藤氏が聞いています。
「歴史上の人物たちのあいだにも、時代を創っていく者と、その時代を維持していく者がありますが?」

 司馬遼太郎は次の様に答えています。
「維新の参議の構成メンバー11人のうち、悲劇的な最後を遂げるのは西郷隆盛、江藤新平、次いで大久保利通です。この3人に共通しているのは、体制創りが大好きで、あとの伊藤博文、山県有朋、大木喬任などは処理家です。戦国時代でいうと、信長は典型的な体制製造家であり、秀吉は、体制製造家としての一面を持っているとともに処理家の才能もあった。家康については、信長が創始したものを、受け継ぎ、アレンジしていく処理家であった。」(以上引用)

 体制製造家と処理家の区分を極端にスケールダウンして考えてみると面白い。大雑把にいえば、起業家は体制製造家の呼吸を有し、無から有を生み出す能力を持ち、その過程において、周囲と軋轢を持つことも多い。創業するものと、処理守成するものとを完全に区別することは難しいかもしれません。

 ただひとつの事業を為し得るには、両者の人材が間違いなく必要になると思います。体制製造家(創業家)と処理家に優劣はありません。
 それにしても司馬遼太郎の父親が薬剤師であったとは驚きました。